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解熱剤について


 

 

 発熱は不快な症状ですが、 人間に与えられた生体防御反応の一つです。 体温は脳幹部の体温調節中枢でコントロールされているので、脳炎などで脳のダメージがなければ、最高40〜41℃まで でコントロールされます。脳の機能が働いていれば、その発熱で脳を障害することはありません。

 発熱(高体温)は細菌やウイルスの増殖 を抑え、それに打ち勝つ免疫作用を高めることが知られています。(解熱剤使用による体温低下は、抗体産生や炎症反応物質などの産生をおさえ、ウイルス感染が遷延化したり、動物実験では死亡率が上昇する)

 しかし、身体的には、不快感、不眠、食思不振 、発汗による脱水、エネルギーの消耗など悪影響があるのは確かです。このような悪影響が目立つ場合は、解熱剤を使う ことも必要です。解熱剤の使用目的は、単に熱を下げることではなく、子供の病状を改善する点にあ るので、一般状態がよく元気な場合には使用する必要はありません。使用の目安は、通常 38.5〜39.0℃以上のときです。

 

 日本ではメフェナム酸(ポンタール)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)などが解熱剤として 認可されていますが、万一、処方されても小児には使わないでください。小児に比較的安全に使える解熱剤はアセトアミノフェン( カロナール、コカール、ピリナジン、アンヒバ、アルピニーなど)とイブプロフェン(ブルフェン など)であるというのが、現在の世界的に共通した見解です。アメリカではそもそもこの二剤以外は小児に適応はありません。

 日本の厚生省(当時)は2000年11月15日、小児インフルエンザ患者に対するジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)を含む解熱剤の投与を制限しました。ジクロフェナクナトリウムを使用した小児患者の死亡率が、他の解熱剤を使用した患者に比べて高かったことと、同剤には脳炎・脳症における脳血管内皮損傷の修復を遅らせる恐れがあるためです。その後メフェナム酸(ポンタール)も同様の理由で制限されました。

 インフルエンザの流行時期には一般の感冒も流行し、その区別は困難です。したがって、現在では小児の感染症による発熱にはこれらの薬剤を使用しないことが原則となっています。

 一方、アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の中でもっとも安全性の高いものといわれています。その性質上、解熱鎮痛薬に多い胃粘膜障害や腎障害のリスクは低く、その構造からアレルギーの可能性もほとんどありません。そこで市販薬に含まれていることも多く、小児の解熱鎮痛薬の第一選択となります。ただし大量服用では肝障害が現れるので注意が必要です。

 イブプロフェンは副作用が少なく安全性に優れ、しかも適応範囲が広いので、小児にも多用されています。WHOのEssential Drugに採用されるなど、その有用性・安全性が評価されています。これも市販薬に含まれることが多いです。副作用として腎障害、胃腸障害がありますが、同種の薬剤に比べて少ないといわれています。

 解熱剤(熱冷まし)とインフルエンザの関連で最も有名なのは、「アスピリン」と「ライ症候群」です。 また、最近は「ライ症候群」よりも急激な経過をたどる病気に、解熱剤使用と「インフルエンザ脳症」の関連も知られています。


 
熱が高いと心配ではやく下げてあげたくなりますが、解熱剤の使用で注意すべきポイントは正常体温まで無理に熱を下げようとしないことで す。1度体温が下がるだけでも、気分が良くなり、食べ物や飲み物が摂取できるようになるのでさじ加減が重要になります。

 

 

Q: 熱による「ひきつけ」が心配です

 生後6カ月から6歳までのお子さんの7%が発熱によるひきつけを起こすといわれていますので、結果的に解熱剤を使わないためにひきつけたということもあります。しかし10人に9人以上は一生経験することはなく、起こしたとしても、後遺症を残すことはありません。
 大多数のお子さんは、ひきつけを予防するために熱を下げる必要はありません。


 

Q: 熱のために脳炎を起こさないでしょうか

 熱で脳炎を起こすことはありません。また頭に障害を起こすこともありません。
 脳炎は病原体が脳に侵入することによって起こり、発熱によって起こるのではありません。 脳炎の症状は、ぐったりする、呼びかけに応じない、眠ってばかりいる、などの意識障害、機嫌の悪さが続く、頭痛(乳児では首を前に傾けたり、おむつ交換時足をあげると泣く)、嘔吐、けいれんなどです。症状を注意深く観察していれば見逃すことはないはずです。

 


 

解熱剤の使用について

 
Q: 何度ぐらいで?

  1. 38.5℃ あれば使用しましょう。

  2. 38.0℃ でもぐったりしていれば使用し、元気があれば使用せずに様子を見ても良いでしょう。

  3. 一度使用しても熱が下がらない場合や、一度下がった熱が再度上がった場合は最低3〜4時間の間隔をあけてから、もう一度使用しましょう。普通は多くても1日4回くらいの使用ですみます。

  4. 熱性けいれんの心配のある児は早めに使用しましょう。

  5. 太い血管 ( くびの横、わきの下など ) を冷やしましょう。

Q: 挿入した坐薬が出てしまったら

  1. 坐薬が溶けずに出てきたら、もう一度挿入しましょう。

  2. 溶けたものが出てきたら、いくらか吸収されているので2時間程経過をみて、熱が下がる傾向がなければ再度使用しましょう。

Q: 解熱剤の効果は

  1. 解熱剤の使用後1〜2時間経過して判断しましょう。

  2. この時、平熱まで下がらなくても38.0℃以下であれば、薬の効果が出ていますのでそのまま様子をみましょう。

  3. また、病気によっては通常の解熱剤で38.0℃以下に下がらない場合がありますが、色々な強さの解熱剤がありますので医師に相談しましょう。

Q: 坐薬の挿入方法は 

  1. ベビーオイルなど滑るものをつけて、先のとがった方から肛門に挿入して、しばらく(5秒ほど)肛門を押さえていましょう。

  2. 1/2 又は 2/3 を使用する場合は、図のようにカッター又はハサミで切り、先のとがった方を使用しましょう。

 
 
 


 
Q: 坐薬の保存は

  1. 冷蔵庫内で6ヶ月間は保存できます。

  2. 解熱剤も他の薬同様に、年齢や体の大きさで、種類や量が違いまので他児へ使用する 場合は必ず医師に相談しましょう。