麻疹ウイルスの感染によっておこる感染症です。感染力がとても強く、たまたますれ違っただけでうつった例も報告されています。
また、はしかのときは免疫能が低下するので、肺炎などの合併症をおこすことが多く、重症化しやすいのが特徴の一つです。流行しているときは、保育園、幼稚園、小児科の待合室などでうつることが多いので注意が必要ですが、ワクチンによる予防が一番有効です。
ヒト以外には伝染しないウイルスなので、ポリオの次は麻疹が根絶計画の目標になるでしょう。事実、米国では土着の麻疹はほとんどいなくなり、
旅行者などの外国人(日本人が名指しされてる)からの感染が問題になっています。
症状
はしかは、麻疹ウィルスが空気中を伝染しておこる病気で、体にウィルスが入ってから10〜12日目ごろから、症状が出始めます。
初めは発熱、咳、鼻みずのかぜ症状で、最初の時期はなかなか区別がつかないことが多いようです。
ふつうの「かぜ」と違う点は、熱と咳が少しひどい、目やにが多い程度で、3,4日目くらいで、口の中(ほっぺたの裏側)に「コプリック斑」といって、白いブツブツができ、それが診断の決め手にな
ります。このあと、症状のピークになり、高熱が続き、咳が強くなり、全身にはしか特有の赤い発疹(ブツブツ)がでてきます。
この頃は、熱や咳もひどく、口の中があれて食事や水分もとれなくなり、病気の間でもいちばんしんどい時です。熱は最初から数えると1週間から10日間、ブツブツがでてから4,5日間くらいつづきます。熱が下がり始めると元気もすこしづつでてきます。ブツブツが黒ずんでくるのもこの時期です。
熱が下がっても1〜3日間は、ほかの子供にうつすといわれています。肺炎や中耳炎などの合併症が、「かぜ」の時よりも多くみられるので、熱がふつうより長くつづく時は、医師に相談してください。
診断
症状から
ほとんどの場合、”はしか”の診断ができます。血中の麻疹ウイルスの抗体価を測定し、”はしか”の確定診断をすることもあります。
病院での治療
麻疹ウイルスに直接効く薬はありません。解熱剤、咳止めなどの対症療法といっしょに、二次感染予防のため抗生剤を処方することも多くあります。
かなり辛い病気なので、入院が必要になることも多いのですが、隔離病室がないと入院させてもらえません。やはり予防接種がいちばんです。
家でこうしてあげて
はしかは、ウィルスでおこる病気なので、今のところ特効薬はありませんが、病院では、合併症などのことも考えたうえで処方していますので、出された薬はきちんと飲ませてください。家での看護は安静が第一で、決められた期間までは、外出やふろはいけません。汚れやすいところは、やわらかいタオルでふくなど不潔にならないようにしましょう。熱のあるときは、ふつうの「かぜ」のときの注意と同じです。
はしかだからといって、無理に厚着をしたり、しめきった部屋にねかせるておく必要はありません。氷枕や解熱剤を指示どうりに使ってください。熱が長くつづくので、水分を十分とらせ、消化のよいものをすこしづつ与えます。果物を冷たいジュースにしたり、野菜を細かく切って煮込み、スープにしてもいいでしょう。できる年齢なら、口の中を清潔にするために、うがいをすることも大切です。
家庭での看護のポイント
「はしかは暖めろ」は迷信です! 熱が続くときには
冷やしてあげましょう。部屋の温度は暑からず寒からずの快適にして、時々換気をしてください。咳が激しいときは加湿しましょう。
熱が長く続いて脱水症を起こしやすいので、飲み物はじゅうぶんにあげてください。ジュースでもお茶でも、本人が飲みたいものならなんでも結構です。
ご飯は、食欲もなくなるし、のども痛いので、柔らかめの消化のよいお粥さんのようなもの。プリン、アイスクリームなどでもOK。熱が下がれば、お風呂はかまいません。
はしかで、外で遊ぶことや保育所・幼稚園などの通園ができるのは、熱が下がってから三日以上たってからです。かならず、医師の指示にしたがうようにしてください。また、なおってからも一カ月くらいは、体の抵抗力がおちているといわれています。遠出や、繁華街などひとごみの中には、なるべく連れて行かない方が無難です。
気をつけて
たいへん機嫌が悪くなるので診察室では激しく暴れてじゅうぶんな診察ができないことがあります。重症の結膜炎、口内炎を見逃すおそれもあるので、おうちでも目や口の中を気をつけてみてください。肺炎や脳炎などいろいろな合併症を起こしやすい病気です。きちんと治るまで目が離せません。