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感染性胃腸炎


 

感染性胃腸炎とは

 

 感染性胃腸炎とは、嘔吐・吐き気・下痢・腹痛などの胃腸症状を主とする感染症です。熱も伴うこともあります。そういった嘔吐や下痢を引き起こす感染症の原因はいろいろありますが、大きく分けて、ウイルス性のものと細菌性のものとに分かれます。


ウイルス性胃腸炎の代表的なものとして、ロタウイルス、
ノロウイルス、アデノウイルス などによるものがあげられます。頻度のもっとも高いのがロタウイルスです。仔細は下のまとめのようです。

 

ウイルス性胃腸炎のまとめ

 

   ロタウイルス(A群、B群、C群) --- 冬期のウイルス性胃腸炎の約40〜50%

ロタウイルス胃腸炎

 

  • A群:  6〜24カ月の乳幼児に多く、比較的晩冬(2-3月)に流行します。ウイルス性胃腸炎の中では、 もっとも嘔吐や下痢が強く、脱水症などで重症化 することが多い。、高熱(30-40%)を伴うこともあり、頻回の下痢便は、白色〜淡黄色の水様便で、5-7日続きます。けいれんを起こすこともあります。保育園や幼稚園などで集団発生することもよくあります。経口感染が主ですが、空気感染も考えられます。

  • C群:  3才以上の年長児や成人にみられ、春から初夏にかけて流行することが多い。その他はだいたいA群と同じですが、A群ほど大流行することはあまりありません。

  • B群:  今のところ日本での報告はなく、中国のみ

  • 便の迅速検査で約15分で判定可 能

   カリシウイルス(ノロウイルス、札幌ウイルス) --- 冬期のウイルス性胃腸炎の約30〜40%

ノロウィルス 胃腸炎
 
  • ノロウイルス  = 小型球形ウィスSRSV

  • 主に食べ物(生カキ、サラダが多い)、生水などを介して感染します。11月から3月の冬季を中心にウイルス性の食中毒として集団発生することもしばしばあります。経口感染が主ですが、空気感染もあるようです。

  • 乳幼児から成人まで発症します。ロタウイルスほどではありませんが 、嘔吐や下痢が強く重症化することもあります。

札幌ウイルス胃腸炎
  • 乳幼児に集団発生することが多くやはり冬期に流行します。

  • ロタウイルスや ノロウイルスほどは、重症ではありません。

   腸管アデノウイルス(40、41、7型) --- 冬期のウイルス性胃腸炎の約5〜10%

腸管アデノウイルス胃腸炎

  • 主に3才未満の乳幼児にみられ、1年中ありますが夏〜秋期にやや多くみられるます。

  • ロタウイルス などに較べ、軽症で発熱も少ない。

  • 便の迅速検査で約15分で判定可 能

   アストロウイルス(1〜8型) --- 冬期のウイルス性胃腸炎の約5〜10%

アストロウイルス胃腸炎

  • 主に乳幼児に急性胃腸炎を起こします。冬季に発症しますが、一般に軽症で、嘔吐や発熱も少ない。

.   その他のウイルス (コロナウイルス、コクキッサーウイルスA9型、B5型)

その他のウイルス胃腸炎

  • コロナウイルス(秋〜冬)、コクキッサーウイルス(夏)なども胃腸炎をはじめいろいろな、かぜ症状を引き起こします。

 

 

 

細菌性胃腸炎とは 

 

 カンピロバクター、サルモネラ、病原大腸菌、腸炎ビブリオなどの細菌が原因のものを細菌性胃腸炎と呼びます。特に夏場に、食中毒など引き起こします。  治療では、下痢がひどくても下痢止めを使用しないことがあります。これは細菌に感染した便をすべてからだの外に出してしまうためです。細菌の種類によっては、抗菌薬を使用したり入院が必要になることもあります。脱水症状をおこしやすいので、水分補給に気をつけます。 まとめは下のようです。

 

カンピロバクター腸炎

  • 細菌性腸炎の中で最も多く見られる(10〜20%)

  • カンピロバクターはニワトリ、牛、豚、羊など多くの家畜や犬、猫などペットの腸管に生息し、これらの糞便で汚染された食肉や水で感染します。とくにニワトリの保菌率は50〜80%であり、鶏肉の内臓や皮膚は市販のものでもこの細菌で高度に汚染されており、鶏肉は重要な感染源であるとされます。またキャンプ場の飲料水や井戸水、簡易水道の水などが汚染されて感染源になる場合には集団食中毒になることもあります。ペットに接触することでも感染するとされます。

  • 少量の菌量でも発症し,発症までの潜伏期間(1〜10日:平均2〜3日)が比較的長いのが特徴です。乾燥や熱に弱いが、10℃以下の低温では長時間生存します。

  • 症状は発熱、下痢、腹痛、悪心、嘔吐で急性胃腸炎の症状です。中でも下痢はほぼ全例に認められ90%は水様下痢、約40%が血便を示します。発熱、腹痛は90%に見られます。この疾患は一般に自然治癒の傾向が強く、腹痛や脱水に対する対症療法を行っていれば数日で改善します。しかし症状改善後にも糞便中に2〜3週間排菌が続くと いわれ、体力や抵抗力のない乳幼児や基礎疾患を待つ人に対しては再発の危険性、集団内での二次感染の可能性、髄膜炎や箘血症など重症化予防のために抗菌薬を投与します。この細菌は一般に人から人への接触で感染することはまれで、患者の排泄物の分別処理が徹底されていれば厳重な隔離は必要ありません。

  • 予防方法は、 生肉の調理に注意することが大切です。生肉を触った手で食器や野菜を触らない。肉は十分に火を通すなど生肉にはこの細菌がついているものとして取り扱うことです。

サルモネラ腸炎

  • 牛・豚・鶏などの動物の腸管や,河川・下水等自然界に広く分布しています。サルモネラには約2500種類以上の血清型があるといわれ,その中でもサルモネラ・エンテリティディスによるものが多く、これは家畜の腸管内に生息しているので食肉からの感染もあるだけでなく、鶏卵及び鶏卵加工品が疑われる食中毒も多く発生しています。牛や豚、鶏の糞便にいる菌で、これらの肉類や卵、加工品、乳製品にもいる菌です。

  • とくに卵は集団食中毒の原因の半数を占めるので、赤ちゃんに卵を与えるときは、必ず火を通したほうがよいといえます。また、ミドリガメなどのペットから感染することもあります。

  • 8月をピークに、5〜10月の気温が高い時期の感染が傾向として多く、 潜伏期間 6〜72時間(通常12〜24時間)で、激しい下痢や嘔吐、発熱などの症状が出ます。通常は4〜5日で回復しますが,症状が進むと有熱期間が2週間近く続くことがあります。また、悪化すると、ひきつけや意識障害が起こることもあります。

  • 予防方法は、 こB$N6]2CG.$K$h$k;`LG$9$k$N$G!"FyN`$dMq$ND4M}$G==J,$J2CG.$r$9$k$3$H!#
    サルモネラはネズミ,ハエ,ゴキブリ,ネズミなどが媒介として汚染するのでこらの駆除,侵入防止をすること。

病原性大腸菌腸炎

  • 大腸菌は人や動物の腸管に存在する菌で、ほとんどは病原菌ではありません。

  • 病原性があるものは、組織侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌)の4種類です。

  • 中でも注意が必要なのが、O-157に代表される、腸管出血性大腸菌で、とても感染力が強く、 少量の菌でも発症します。また、患者の便などを介して人から人への二次感染も起します。 血清型によりO1・O26・O157・O111などが知られています。O-157は牛など家畜の腸管に存在し,糞便が様々な経路で?)IJ$d?e$r1x@w$7$F46@w$7$^$9!#6]$OG.$K

  • O-157は、感染して2〜7日で発症し、下痢や激しい腹痛、発熱、倦怠感のあと、大量の鮮血便が見られるのが特徴です。乳幼児 (重症)の場合は、溶血性尿毒症症候群(急性腎不全や急性脳症)を起こして死にいたる危険性もあります。

  • 予防方法は、食べる前に食品の中心部まで十分加熱(75℃1分以上)すること。
    まな板・包丁・ふきんなど調理器具は十分洗浄し 、熱湯などで消毒すること。

腸炎ビブリオ腸炎

  • 腸炎ビブリオ塩分を好むため,原因となる食品は生鮮魚介類およびその加工品がほとんどです。海水温の上がる6月上旬から9月初旬にかけて海水中で大量に増殖するので,夏季の海産魚介類の扱いには特に注意が必要です。

  • 激しい腹痛(特に上腹部)、下痢、発熱(37〜40℃)、嘔吐などの急性胃腸炎症状があり、潜伏時間4〜28時間(通常10〜18時間) で、通常は2〜3日で回復しますが、症状が進むと水様性の下痢を1日に10回以上起こすこともあります。

  • 予防方法は、腸炎ビブリオは,真水・熱に弱いため、魚介類を生で食べる時は特に流水(真水)でよく洗い、加熱して食べる時は中心部まで十分に加熱すること。
    魚介類の調理器具は一般用とは区別し、使用後は十分に洗浄・消毒して二次汚染を防ぐこと。
    刺身など生で食べるものは 、冷蔵保存(4℃以下)を徹底し,できるだけ早く食べきること。

黄色ブドウ球菌腸炎

  • 黄色ブドウ球菌ヒトの生活環境に広く分布し,健康な人でも喉や鼻の中,毛髪などからでも検出され ます。この菌は増殖する時にエンテロトキシンという毒素をつくり、この毒素を食品と一緒に食べることによって食中毒がおき ます。黄色ブドウ球菌は熱に弱いが 、毒素は100℃30分の加熱でも分解されません。

  • 原因としては、調理のときに人の手の黄色ブドウ球菌混入することが多く、おにぎり,仕出し弁当,生菓子など による報告が多いようです。

  • 症状は、特に吐き気・嘔吐(激しい)、腹痛、下痢 で、潜伏期間は短く、1〜6時間(通常3時間)です。、

  • 予防方法は、手指などに切り傷や化膿性疾患のある人は,食品に直接触れたり,調理をさけること。(やむを得ない場合はビニル手袋をすること)。
    調理の際に帽子やマスクの着用をすること。
    食品は10℃以下で保存し,菌の増殖を防ぐこと。
    弁当やおにぎりは冷ましてから包装すること。

ウェルシュ菌腸炎

  • ウェルシュ菌は、ヒトや動物の糞便や土壌、下水などの自然環境に広く分布しています空気のないところで発育する嫌気性細菌で 、それだけでなく耐熱性の細菌ですので、加熱済みの食品でも感染することがあります。一度に大量調理された食品が原因となりやすく 、給食を原因とする大規模集団発生を引き起こすこともあります。

  • 原因は、同一容器で大量に加熱調理され、長時間室温に放置されたカレーライス・シチュー・めんつゆなど によることが多く、潜伏期間は6〜18時間(通常12時間)です。症状は下痢・腹痛ですが、比較的軽症で1日くらいで回復する ことが多いようです。

  • 予防方法は、前日調理を避け,加熱調理したものはなるべく早く食べること。
    調理後,食べるまで時間がかかる場合は,冷却後,冷蔵保存すること。
    食べる前に再加熱を十分行うこと。

 


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